「生贄を抱く夜 (講談社ノベルス)」

 そんなカンジで、ますは最近読んだ本から西澤保彦の「生贄を抱く夜 (講談社ノベルス)」。
生贄を抱く夜 (講談社ノベルス)
 西澤保彦は好きな作家の一人。「色々と散りばめたパーツが、最後に綺麗に組み合わさって思いもかけない全体像を描き出す」ってなミステリーの醍醐味をしっかり味あわせてくれる。
 んでもって、そういうストーリーを、お気楽なキャラで書き出してくれるのもお気に入りの理由の一つ。「酔いどれ探偵」シリーズとか「チョーモンイン」シリーズなんかはその代表で、今回のこれはその「チョーモンイン」シリーズの最新作の短編集。
 と書いたが、今回は読んでてどうにも後味が悪いお話が多かった。正直今回ははずれかなー? と思いつつ読んでいたら……さすが我らが西澤氏。最後の最後でやってくれました。短編最後の書き下ろし、「情熱と無駄のあいだ」。
 これですよ。これを私は待っていた。
 とあるレストランを舞台に語られる、膨大な時間と資金と執念を費やして復讐を成し遂げようとする美女「香保里」、「チョーモンイン」としてそれを阻止すべく動くが「香保里」の語る復讐にいたった過去に自身では抑えようもない共感を覚えてしまうシリーズ主人公の一人である「嗣子」、そしてそんな彼女達を見守りながらも自らの職務は忠実に果たすソムリエ「假屋」、この三人をメインにすえて織り成されるストーリーは、まさに私の心のツボにクリティカルヒットです。
 そんなに長い話でもありませんし、どこかの店先で見かけたら、お手にとって最後の一本にお目を通す事をお勧め致します。*1

*1:ただし、吹き出して周りの人から不審の目で見られても当方は責任を負いかねマス。