本日のオススメ。『西澤保彦』

 「冴えないけど、酔うほどに思考の冴え渡るタックこと匠千暁が、殺人事件から日常のちょっとした疑問まで、ありとあらゆるナゾに対し仲間たちと酒盛りしながら整合性のある結論を導き出していく」というスタイルの、私の好きな作家の1人である西澤保彦の代表作の一つと言える<タック&タカチシリーズ>、そのコミック版です。西澤作品のファンとはいえ、さすがに少女漫画系列のチェックはしていないため、たまにアマゾンとかを覗いた時に発見する、って感じです。この前にも「16秒間の密室―タック&タカチの事件簿 (SUSPERIA MYSTERY)」が出ていて(こちらもオススメ)、こちらもおなじ経緯での入手でした。
 こちらは前作もそうですが、コミック版になるに当たって登場人物が美形になってたり、展開がアレンジされてたりします。特に変わったのが、ヒロイン(?)タカチこと高瀬千帆でしょうか。原作では独自の信念とプライドを持った近寄りがたい孤高の美女でしたが、こちらではそれに比べればかなり気安い存在になっています。タックに対する態度とかもかなりストレート(裏返し含む)ですし。ですがその分、わかりやすい人間関係になっているともいえて、コミック版としての身軽さを発揮するにはよいのでしょう。
 さて近作では、シリーズの初期エピソードおよび後期エピソードと、幅広くコミカライズされています。逆に言うと、ほかは長編がおおく、コミカライズ向きの短編がそれだけともいえますが。うーん、いっそ長編をコミカライズしてくれないかなぁ。
 それはともかく。原作でのナゾを肴に盛り上がるわいわい感は、コミカライズで一層その愉快な雰囲気が明確にされいて、まさに組み合わせの妙、非常に幸せなコミカライズといえるのではないでしょうか。
 タックたちのとりとめのない妄想に付き合う間隔で、いかがでしょうか?


 

黒の貴婦人 (幻冬舎文庫)

黒の貴婦人 (幻冬舎文庫)

 さて、こちらは原作版。物自体は結構前に出ていたのですが、ハードカバー作品で躊躇していたら、ふと気付くと文庫版が出ていたので購入。今回もまた前作「謎亭論処―匠千暁の事件簿 (ノン・ノベル)」に続く短編集で、これもいずれコミカライズしてくれないかなぁ。
 近作ですが、基本的に「大学生4人組」と言うスタイルだったこのシリーズで、この本ではほとんどのエピソードが彼らの卒業後になっています。少しずつ変わっている彼らの姿が、微笑ましくもあり、名残惜しくもあり。でも、仲間内で集まって、わいわいと妄想を働かせながら真相にたどり着いてしまうというスタイルは変わらなくて。末永く見守りたいシリーズです。